このカテゴリでは「注文住宅を建ててみたいな」と考え始めた方向けに、ざっくりとした基礎知識を紹介しています。注文住宅を建てようと思った時、最初の段階で固めておかなくてはいけないのが全体予算です。ここでは、よくある「安心できる返済額」とは別の角度からの予算決めについて書きました。ご参考になさってください。
一般的なライン
まずは「一般的に言われていること」を抑えてみます。
一般には住宅ローンの返済額は年収負担率の25%以内が安全と言われているようです。年収が400万円ならば100万円(月々8.3万円返済)、600万円の場合150万円(月々12.5万円返済)、800万円の場合200万円(月々16.6万円返済)という計算になります。
ただ、年収の中には各種保険や税金等、実際には使えないお金も含まれています。年収400万円の人の手取りは、だいたいですが、なんと320万円ほど。意外と引かれていることにびっくりするのでは?
今現在の家計から考える
一般的なラインはそれとして押さえておいて、同じ年収400万円でも子供の有無や共働きかそうでないかなどによって出費も様々です。
まずは今払っている家計を基準にしてシミュレートしてみるのが良いと思います。わたしたちは、家計を洗い出し、後にわたしが出産などで働けなくなってもしのげる返済額、今後もしっかりと貯金をしていけそうな返済額……、と考えていき、そこから借入額を検討しました。
万が一の時のことを考えるならば、1年分の年収(難しければ半年分)の貯金は残した状態で建築計画を進めるようにするのが良いと思います。けがや病気で万が一働けなくなっても、一年分の貯金があればゆっくり療養することができます。
月々の返済額から総予算を考える
総予算を考える時の借入額に関して、管理人の考え方を書きます。
月々の返済額が見えたら、次にその返済額でいくら借りられるかをシミュレートしますが、これはその時の金利によって変わります。金利が安い時期ならば少し多い金額が出るし、金利が高い時期ならば、借入額は少なくなります。また、金利は時期だけでなく、変動か固定かでも大きく変わります。だいたい0.5~1%ほど違うので、住宅ローンのような大きな金額ではかなりの違いが出てきます。
ちなみに
- 月々10万円返済×(0.5%)=3852万円
- 月々10万円返済×(1%)=3542万円
ほどの差が出ます。
※現在(2017年秋)はフラット35の最低金利が1.080%です。
さて、この数値はなにを指しているのでしょうか。
ここで、「うちは3852万円まで借りられるのだわ」と思った人は、無意識に「変動金利」を選択していることになります。逆に「3550万円くらいなのね」と思った人は、「固定金利」を選択しているということです。
ですが、変動金利は金利が上昇する可能性もあります。(もちろん、下がる可能性も、長い期間この金利を維持する可能性もあります。どうなるかは誰にもわかりません。)
仮に金利が上昇した場合、安全圏のラインを上回った額の返済を迫られる可能性があるのです。
ですから大切なのは、今、予算を立てるという段階では、固定金利の値を参考にして総予算を組むのが良いのではないか、ということです。
その場合、月々10万円の返済を予定するならば、3550万円が最大の借入額となります(※2017秋の金利の場合)。その上で、固定金利にするのか、変動金利を選ぶのかは個人の考え方次第なので、よく考えて選べばよいと思います。
ちなみに3550万円を現在の変動金利0.5%で借りると、返済額は月々9.3万円になります。余った7千円を毎月繰り上げ返済に回せば、固定で借りた場合よりもかなり効果的にローンを圧縮できます。(繰り上げ返済分は、全て元金の返済に回されるのです!)今後も長期的に低金利が続くと思われる場合には、かなり魅力的な選択肢ですよね!
ただ、現在は過去に例がないほどローンの金利が下がっています。管理人がローンを組んだ時には最低金利の値がだいたい変動0.7%、固定が1.7パーセントで、1%近くの差がありました。現在は固定と変動の差が0.5パーセントほどのようなので、あり得ないほど固定金利が下がっているという見方もできるのではないでしょうか。
変動金利が得か固定金利が得かというのは答えがない問題で、どう考えるかは自分次第、どっちが得かというのは、未来にならなければ誰にもわからない問題です。ですが、予算を考える時には、固定金利で考えるのが良いと思います。
理想の家を描き、建物の予算を決める
総予算が決まったら、次は建物の予算を決めるのがオススメです。理想の家を描き、実際にモデルハウスや完成見学会を回って、どのくらい予算があれば自分の希望を叶えられそうかを考えていきます。
余談ですが、とくにモデルハウスに行くと、必ず連絡先を書かされて、担当営業がつき、営業の手紙、電話、訪問などがあります。「実際に動き始めてる」ということが分かると営業も過熱してきがちなので、「考え始めたので色々見て回って勉強を始めたところなんですよハハハ」くらいでかわしておくのがオススメです。
総予算から建物予算を引いた額が土地の値段になります。が、実は「土地と建物」のほかにもかかる費用があります。
その他諸々を引く
建物予算、土地予算のほかに用意しておかなくてはならないものを列挙しておきます。
諸費用
土地取得時に不動産会社へ支払う仲介手数料、ローン審査や手続きにかかる手数料、登記にかかる登記費用などがあります。
だいたい総予算の10%を用意しておく必要があると言われています。仲介手数料やメーカーへの契約金は現金で必要になります。
地盤改良費
地盤調査にかかるお金は10万円程度ですが、その結果地盤改良が必要となった場合、80万円~150万円ほどお金がかかってしまうことがあります。土地代、建物代でギリギリの予算で進めていたら地盤改良が必要となり、希望の家が建てられなかった。。。となったら悲しいので、予め100万円ほどを地盤改良費として予算を立てておきます。
地盤改良を行わなくてもよいとなったら、そのまま繰り上げ返済に回すなり貯蓄するなりすればよいでしょう。予算立ての段階で見積もっておくことは、かなりの意義があると思います。
外構費用
玄関までのアプローチ、ポスト、駐車場、庭の施工は本体代金に含まれていません。外構費用はどこまでやるかでかかるお金が違ってくるため一概にいくら、とは言えませんが最低でも100万円~200万円を見ておくのが良いと思います。
(※工務店によっては最低限の外構(玄関までのアプローチや駐車場にコンクリートを敷くこと)などは代金に含んで見積もりを出してくれるところもあります。)
カーテンレール、カーテン取り付け代
絶対に必要なのになぜか本体代金に含まれていないのがカーテンレールとカーテンの費用です。20万円~100万円ほどかかります。
我が家はカーテンレール、ブラインドなどはすべてニトリで施主支給、リビングのカーテンのみ少し良いものにして、ほかの部屋はカーテンもすべてニトリで揃えました。最低限のお金しかかけていませんが、それでも全部で20万円ちょっとかかりました。この予算、忘れがちなので気を付けてください。
家具費
新しい家に引っ越したら、どうしても新しい家具が必要になる場合があります。すべて今の家で使っているものを持っていけるということであればよいですが、やっぱり新しい家具は欲しくなってしまうことが多いようです。
それに電化製品などは引っ越しで調子を悪くしてしまうこともありますので、最低限(50万円ほど)の予算はとっておくのが良いと思います。
エアコン取り付け費
家具費等に含めてもよいかもしれませんが、家が広くなる分エアコンの台数が必要になったりパワーの強いものが必要になることが多く、買いなおしが必要になる場合が多いと思います。また、取り付けにもお金がかかります。エアコン工事は電気工事の時に一緒にしてもらえることがあります(費用はかかるが、ほかで頼むよりは安い、という場合が多い)。メーカーに聞いてみてください。
土地予算を出し、現実的に総予算で収まるか検討する
(総予算)-(建物費)-(諸費用等)=(土地予算)となります。
例えば貯蓄+借入の総予算が4000万円の場合、地盤改良予算100万円、外構予算200万円、カーテンレール、家具等で100万円とざっくり見積もると、それらで400万円となります。
残りが3600万円なので、その10%を諸経費として引いてだいたい350万円、残りの3250万円ほどが土地と建物の予算ということになります。
この場合、仮に建物費に2000万円ほどかかりそうならば土地は1250万円の予算で探すことになります。
最初に予算をきっちり立てておこう
総予算が4000万円あっても、土地、建物に使えるお金がかなり少なくなることにびっくりしたのではないでしょうか。上記の表は外構費や家具費などが最低限なので、それらもきっちり作りこみたいという場合にはもっとお金がかかってきます。
正直我が家はあとで作り足せる外構よりも家の性能を優先させたかったので、外構は基本的なもの以外後回しにして、その辺の予算は極力抑えて建てました。(そしてそのまま3年ほど住んでいます。。。)
いずれにせよ、一番大切なのは「なにを優先して建てるか?」という個人の方針であり、それは「どんな建物を建てるか」という問いになっていきます。土地を先に買ってしまうと、一番大切で楽しい部分である「どんな家を建てるか」というところに予算と力をかけられません。
総予算を決め、各予算をきちんと把握してから実際に土地探しを始めることを強くオススメいたします。